眼帯×CHOCOLATE

今の、

舌打ちは耳に入らなかったものとして。ソワソワと、次なるステップへの移行を、人様宅にて無謀にも試みようとしていたところ。

「流してやるから」
「ファッ?!マジで!」

意外な導きに、ピンと背筋が伸びた。

「だってミツ、不器用でしょ?うちの風呂汚されたら俺、切れると思う」
「ア、デッスヨネー」

伸びた背筋をそのままビシャリと凍らせてしまう銀ちゃん、恐るべし。ほんコワ。

「ほら、さっさと立て」
「ウッス!」

ブリーチ剤を一滴でも落としたら、殺すと言わんばかりの眼力とオーラで連れて来られたバスルーム。最早強制連行。

シャワーの温度がとんでもなく上がらない事を祈りつつ、俺は銀ちゃんに全てを委ねた。心地良い温度のお湯が髪の毛の隙間を通り抜け、少しだけ安堵する。

いや、マジで熱湯とか冷水が降り注いできたらどうしようかと思ったわけですよ。

俺は、某ダチョウさん倶楽部的なリアクションとか出来ないんで。ムリムリ、普通に死ぬわ。ああ、てかほんとキモチー。

美容院でもだけどさ、シャンプーされると眠くなんだよなー。…ぐう。


「ミツ、終わったよ」
「…っんあ!…あ、ありがと銀ちゃん!」

なんということでしょう。

柔らかで良い匂いのタオルまで貸してくれるというミラクル。にへっと緩む口元を隠しもしないで、そのまま髪の毛を包み込む。なんつうか、幸せ?

「せめて自分で乾かしなよね」

そう言って銀ちゃんはドライヤーを手渡しながら、小さく笑ってくれた。ほんと、懐かしいっていうかなんていうか。嬉しいよ、こーゆうの。

「なぁ、綺麗に染まってる?」

湧き上がる高揚感を押さえながら、満面の笑みで尋ねる俺に。

「――さあ?」

今度は、何故だか不敵な笑みを向けてくれた。ヘイヘイヘイ、ちょっと待て。こえーじゃんその反応。何、なんなのよ。ハゲたの?