「ちょ、銀ちゃ…」
「別に、お礼なんか端から期待しとらんわ。気色悪い」
俺の声を制止するように、被さった椎名瑞樹の声。そして、その言葉に銀ちゃんは更に口角を上げた。
「でしょうね。じゃあ、お気をつけて、――椎名先輩」
「そうさせて貰うわ、後輩」
背を向けてしまった椎名瑞樹の表情は確認出来なかったけれど、先程の野々上先輩へ向けていた表情が浮かぶ。
軽く右手を上げ、駐輪所の方へと向かって行く先輩達の背中は、温かくて、
すげえ大きかった。
「俺達もさ、あんな先輩になれんのかな?」
「ミツは無理だろ…」
真面目に締めようとする俺を、瞬時に粉砕する銀ちゃん。え、なにコレ?またこんな扱いなの俺?最後までコレなの?嘘でしょ?
「ミッツンはそのままで居ろよー?その方が面白れえしさ」
「そうよねエ、充だもの」
「ちょ、要ちゃん!…ふふっ」
あ、マジか。瞳ちゃんまで笑ってるんですけど?!やっべえ俺もうこのキャラ定着?!
「って、事だろうなミツ」
いや、意味わかんねえ。つうかわかりたくない。切実に。けど、
「だー!もうっ!取り合えず俺のポジションは変わらねえって事デスネ!定着上等!」
「セイカイーオメデトー」
棒読みで手を叩きながら近付いてくる銀ちゃんと、皆。



