眼帯×CHOCOLATE

銀ちゃんの声で恐る恐る目を開くと、そこには俯いて肩を震わせる虹の姿があって。

しっかりと握られていた筈の鉄パイプは手から離れ、再び意味もなく床に転がっていった。


「――――っス」


それは、蚊の鳴く様な小さな声

けれど、確かに聞えた虹の声


『出来ないっス』


目元を制服の袖で押さえ付ける虹に、銀ちゃんが頭をわしゃわしゃと撫でる。

それに事切れたのか、

声を上げて泣きだす虹。こうなったら、もう黙ってなんかいられねえよな?だって虹は、俺らの大切な弟だから。




「……ホント、バカよねエ…虹」

げほっと、血を吐き出すような苦しげな咳と共に聞えて来た声に、また、熱くなる目頭。

爽と瞳ちゃんに支えられながら、要がゆっくりと銀ちゃん達に近付いて行き、そして、

「これでチャラにしてあげる」

切れて血の付いた口の端を持ち上げ、少し震える指でデコピンを一発。

そんな要の行動に、虹は顔をくしゃくしゃにしながら、更に声を大きくして泣き叫んだ。


「な、何よお、そんなに強くしてないでしょ?」
「バッカ!おま、空気読めよ」
「ハア?!」

いつもの空気、いつもの俺ら、いつもの、

日常。