眼帯×CHOCOLATE

俺が銀ちゃんとやり合うわけでもないのに、嫌な汗が額から滲んでくる。

「やっぱり、口だけなのか?」

いつもより低いトーンの声が、更に恐怖心を煽った。俺が虹の立場なら、正直逃げたくなるだろう。それ程までに、重い空気。本当なら、一秒だってここに居たくはない。




「……虹!」

一際大きな声を張り上げる銀ちゃんに反応して、虹は無造作に床に散らばっていた鉄パイプを握り締めた。

「ち、違う!違う違うチガウ!」


自分に言い聞かせるように

暗示をかけるように叫ぶ虹


床に鉄パイプが触れているのか、耳障りな金属音が小さく響いている。それは、虹の手が震えているからではないのだろうか。そんな気がするのは、

「ほら、ヤれよ?」

虹の背中が、とても哀しく。脆く、泣いているように見えたから。


「虹!」

もう一度名前を叫んで挑発する銀ちゃんに、虹は鉄パイプを両手で握り締め、奥歯をギリリと鳴らした。


「うわあぁぁァ―――ッ!」

大きく振りかぶった鉄パイプを、銀ちゃんに目掛けて一直線に振り下ろす。

俺も、爽も、思わず目を閉じた。けれど、

銀ちゃんだけは。その刹那も、ジッと虹を見つめていた気がする。そう、感じた。








「泣きたいだけ泣けよ、虹」