「起きろよ、要…」
床に散らばる血の痕
拘束されている手
ぼろぼろの身体と顔
この状態から、容易に想像が付く要に与えられた仕打ち。何だよ、何でこんな事になんだよ…
「先輩、強かったっスよ」
後方から聞えてくる声に、視界が滲んだ。
「…っ虹!お前!」
力任せに胸倉を掴んで、おもいきり壁に押しつける。それでも虹は、動揺する素振り一つ見せる事なく、俺の目をただ真っ直ぐに捉えていた。
「先輩は妹サンを守ってそうなったんスよ。守るべき者が居る人って、強いっスよね」
何かを諦めているような、何処かに心を置いて来ているような、色のない瞳。
「先輩達、ズルイっス」
とん、と胸を押され。
虹との距離が離れていく。そんな俺達の遣り取りを見ていた銀ちゃんが、不意に小さな溜息を吐いた。
銀ちゃんが動くと、
声を発すると、何かが大きく揺れる。それは物理的にどうとかいう問題ではなくて…
「何で泣いてるの?」
心が、魂が、揺らされる。



