「三嶋先輩達、助けなくて良いんスか?早くしないと手遅れになるかもしれないっスよ」
指の関節を曲げながら、虹は淡々と言葉を吐いて更に口角を上げた。
目に前に居るのは、
虹にそっくりな別人なんじゃないかと思いたかった。そう、思ってしまいたかった。
「要、瞳ちゃん」
いまだ動けずにいる爽の背中を軽く押し、俺は体育館倉庫に向かって足を進める。
心臓が、潰れてしまいそうだ。
俺の予感なんて大したものじゃない。当たりっこない。当たる筈なんてない。
当たるな。
「……かなめ」
立て付けの悪い扉が、重く耳障りな音を立てる。薄暗い空間の中に伸びる光の筋の先に見えたものは、目を覆いたくなるような光景だった。
「嘘、だろ」
泣き過ぎて、もう嗚咽しか出す事が出来ていない瞳ちゃん。そんな彼女の目の前で、ピクリとも動かない要。
「要、冗談は止めろって」
俺は、俺達は知っている。
要がどんなに強いか。
普段はバカみたいに銀ちゃんに纏わりついたり、ふざけたりしているけれど、本当は誰よりも努力家で芯の通った奴なんだ。



