眼帯×CHOCOLATE

ふわりと甘い匂いが鼻腔に届いた頃。目の前の空気が揺れ、人が次々と倒れていった。

無駄な動き一つなく、相手の急所を正確に狙う銀ちゃん。本当に一撃。たったそれだけで、力自慢の強面な男達が倒れていく。

「なんだよ、銀が全部やっちまったのなー」

若干つまらなさそうに呟き、自分の頭を撫でる爽。俺も握っていた警棒への力を緩め、肩の力を落とす。

「やっぱ銀ちゃん強いわ」
「流石はトップってか?」

こんな会話が笑顔で出来ているあたり、本当に余裕だったんだ。俺も、爽も、銀ちゃんも。

――次の瞬間までは。









「そこまでっスよ、先輩」


信じたくなかった

信じられなかった


けれど、どうしたって聞き覚えのある声。その方向へと顔を向けると、そこにはやっぱり虹が居て。冷たく、俺達を突き放す。

「三嶋先輩達がどうなってもいいんスか?」
「…っ!」

輝きのない瞳と低い声。こんな虹、知らない。でも、それでも。俺達を真っ直ぐに見据えているその顔は。その姿は。

「―――」

銀ちゃんの腕の中にいた男が、ぐらりと床に落ちていく。その音が、振動が、どこまでも遠くの世界のものに感じた。