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「うーん、成程ね」

話を聞き終わった先輩は、眉間に皺を寄せて溜息を吐いた。それに反応したのか、外で傍観していた椎名瑞樹が教室の中に入って来る。

「鬼島は俺がやる、お前らの仲間は知らん」

パシっと野々上先輩の頭を叩き、それだけ言うとまた外へと出て行った。

そんな椎名瑞樹の後姿を見送りながら、先輩は満足そうな笑顔を浮かべる。

「まあ、あれだよ?鬼島達の事は元はと言えば僕達の責任だしね。こっちは気にしなくていいから、君達は友達を助ける事だけを考えたらいいよって事かな?」

ぱっと立ち上がり、気持ち良さそうに伸びをすると、同じく外へと足を進めて行く。

そして、


「瑞樹は、不器用だから」

ぽつりと落とされた言葉を、一番近くに居た俺は聞き逃さなかった。

まるで嵐のように現れて、嵐のように去って行った先輩達。敵だと面倒だったけど、味方になるとこうも力強いのか。


「少年漫画、昨日の敵は今日の味方の法則だな。そして明日の友ってか」
「いや、ミッツンそれ解り辛れえよ。いっそべジーt「っそおおおおおい!」

禁句を口走りそうになった爽の言葉を遮って叫ぶと、もれなく銀ちゃんからの鉄拳がプレゼントされた。愛って痛いのね。

「ミツ、俺は今物凄く気が立っているから、……解るよな?」
「ハイモチロンデス」

殴られた箇所を擦りながらお口チャックすると、銀ちゃんは黒く静かに微笑んだ。

「じゃあ、行くか」

俺と爽に目で合図をし、先程出て行った先輩達の後を追うカタチで教室を後にする。

向かうは勿論、白鳳学園。要と瞳ちゃんの救出。けれど、俺達は未だ知らない。

――この事件に虹が絡んでいる事を。