先輩は相も変わらず飄々とした様子で、銀ちゃん達の間を通り抜けて行く。

「あはは、そんなに睨まなくても何もしないから安心してよ?」
「…どうだか」


明るい声の先輩に、冷たい声の銀ちゃん。

要の事があるってのに、なんでこう次々と重なるかな!先輩の意図が読めない限り、下手に蔑ろには出来ないし…


「だーから、僕は何もしないってば」

少し離れた位置に居た筈の先輩の顔がドアップで、俺はまた尻餅をついてしまった。

「君達には色々と迷惑も掛けちゃったしね。何かあれば協力するよ」

くいっと眼鏡を押し上げ、先輩は満面の笑みを見せてくれる。

「本当はさ、再戦を挑みに来たんだけど、…ねえ、瑞樹?」

そう言って視線を入り口の方向に投げる先輩。そこには、椎名瑞樹がぶすったれた顔で立っていた。ワオ、機嫌最悪。

「お前が強制的に連れて来たんやろーが」
「あはは、バラさないでよ」

おぅん?なんか、空気が変わってる?

和やかっつーかなんつうか、て、だからああ!今はそれどこじゃないんだってば!


――パン!

大きな音にピタリと会話が止まる。その音を出した人物は爽で、手と手を合わせてナームー状態のまま俺に微笑んだ。

「ミッツン、話が進まねーから俺が説明してもいいか?」
「…あ、あいあいさー」

ささっと野々上先輩の背中を押し、爽に献上的ポーズをとる。そんな俺を見て、先輩は声を上げて笑っていた。うん、先輩が優しくて良かったと思います。

かいみつる、じゅうろくさい、まる