眼帯×CHOCOLATE

瀬戸さんが、何かを言いかけようと口を開いたその時。
 
「――ミツ?」

これまた運がいいのか悪いのか、

「あー、銀ちゃん起きた?」

どうやら眠り姫、…じゃねえな。眠り王子が目覚めてしまったようだ。うーん、コレはかなり気まずい状態じゃね?

「ミツ。と、…瀬戸さん?」
「!」

銀ちゃんに名前を呼ばれた瀬戸さんは、大袈裟すぎる程にビクリと肩を上下に踊らせ、壁際まで思いっきり後ずさりをした。そりゃもう、震度4レベルの揺れを観測するぐらい。

「あ、あの……東雲くん…あの、本当に…ご、ごめんなさい!」

メーター振り切れたアアアア?!ちょ、ま、瀬戸さんカムバーーーック!

突然謝られて放心状態の銀ちゃんと、まさに言い逃げという言葉が似合う瀬戸さん。そして一番微妙な立場な俺。どどどどどどーすんだよコレェエエ!


「銀ちゃん、あの子…」

助けを求めて、銀ちゃんの方へと一旦向き直る。すると、銀ちゃんが突然頭を抱えて唸りだした。いや、可愛いんだけどね。唸ってても可愛いんだけどね、俺の幼なじみ。

「な、なんで?なんで瀬戸さんが僕の所にくるの?あんな事になったのに…」

いやいや、

銀ちゃん鈍すぎでしょ。顔見たら一発でしょーよ。これは、流石に瀬戸さんに同情せざるを得ない。…あ、てか今、さり気に重要なこと言ったくね?

「そー言えば銀ちゃんさ、なーんでチョコ食っちゃったわけ?」

俺の言葉に、銀ちゃんは礑と呼吸と動きを止める。おおう、マジ重症な。

「あんまり言いたくない…」
「俺、今回頑張ったのに?」

これまた意地悪な言い方になっちまったけど。まあ、ぶっちゃけ気になるしさ?

「ぎーんちゃん?」
「―――」

そうして、

漸く観念したのか、銀ちゃんはポツリポツリと言葉を紡ぎはじめた。

どうやら、事の発端はレクリエーションの時間だったらしい。バレンタインに因んで、女子がチョコレートを手作りして持参し、男子がそれを食べていくというもの。

勿論、これじゃあ何の変哲も無いただのほのぼの仲良しクラスだ。ただ、レクリエーションとは何たるか。