◆◆◆
「――ん!要ちゃん!」
聞き覚えのある、可愛らしい声で覚醒できたのはいいのだけれど。後頭部がズキズキと痛む。
「無事、だった?」
痛む部位を押さえようとして、手を何かで縛られている事に気付き舌打ちをする。意外と抜け目がないのね。
「わ、私は大丈夫、…でも」
言葉を濁す瞳に、すぐに虹の顔が浮かんだ。そうだ、この事件には虹が絡んでいる。
「……虹の、事よね?」
薄暗い部屋の中、やっと慣れてきた目で瞳を見ると。肩を震わせ、ポロポロと涙を流して俯いていた。
「私、もしかしたら止められたかもしれなかったのに、それなのに」
瞳も縛られているのか、涙を拭う事はせずに。ただ、ただ、哀しい色を落としていく。
「佐久間くん、塾が一緒だったの。でも、あまりにも違うから気付かなくて…」
「ちがう?」
「…うん」
不可思議な言葉に、再び先程の虹の顔が浮かんだ。そう言えば、まるで解らない程の変装をしていたわね。
見た目は勿論、喋り方も、声色も、雰囲気も、仕草も。全て、――別人。
「塾の佐久間くんは、黒髪に眼鏡で喋ってる所も殆ど見た事がなかったから、声も知らなくて、それと……っ」
喉を詰まらせて咳き込む瞳に、優しく笑いかける。そして、出来るだけ柔らかい声を出した。これ以上、怖がらせないように。
「ゆっくりでいいわよ?大丈夫、要がついてるから」
傷付けないように。
「――ん!要ちゃん!」
聞き覚えのある、可愛らしい声で覚醒できたのはいいのだけれど。後頭部がズキズキと痛む。
「無事、だった?」
痛む部位を押さえようとして、手を何かで縛られている事に気付き舌打ちをする。意外と抜け目がないのね。
「わ、私は大丈夫、…でも」
言葉を濁す瞳に、すぐに虹の顔が浮かんだ。そうだ、この事件には虹が絡んでいる。
「……虹の、事よね?」
薄暗い部屋の中、やっと慣れてきた目で瞳を見ると。肩を震わせ、ポロポロと涙を流して俯いていた。
「私、もしかしたら止められたかもしれなかったのに、それなのに」
瞳も縛られているのか、涙を拭う事はせずに。ただ、ただ、哀しい色を落としていく。
「佐久間くん、塾が一緒だったの。でも、あまりにも違うから気付かなくて…」
「ちがう?」
「…うん」
不可思議な言葉に、再び先程の虹の顔が浮かんだ。そう言えば、まるで解らない程の変装をしていたわね。
見た目は勿論、喋り方も、声色も、雰囲気も、仕草も。全て、――別人。
「塾の佐久間くんは、黒髪に眼鏡で喋ってる所も殆ど見た事がなかったから、声も知らなくて、それと……っ」
喉を詰まらせて咳き込む瞳に、優しく笑いかける。そして、出来るだけ柔らかい声を出した。これ以上、怖がらせないように。
「ゆっくりでいいわよ?大丈夫、要がついてるから」
傷付けないように。



