眼帯×CHOCOLATE

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「――ん!要ちゃん!」

聞き覚えのある、可愛らしい声で覚醒できたのはいいのだけれど。後頭部がズキズキと痛む。

「無事、だった?」

痛む部位を押さえようとして、手を何かで縛られている事に気付き舌打ちをする。意外と抜け目がないのね。

「わ、私は大丈夫、…でも」

言葉を濁す瞳に、すぐに虹の顔が浮かんだ。そうだ、この事件には虹が絡んでいる。




「……虹の、事よね?」

薄暗い部屋の中、やっと慣れてきた目で瞳を見ると。肩を震わせ、ポロポロと涙を流して俯いていた。

「私、もしかしたら止められたかもしれなかったのに、それなのに」

瞳も縛られているのか、涙を拭う事はせずに。ただ、ただ、哀しい色を落としていく。

「佐久間くん、塾が一緒だったの。でも、あまりにも違うから気付かなくて…」
「ちがう?」
「…うん」

不可思議な言葉に、再び先程の虹の顔が浮かんだ。そう言えば、まるで解らない程の変装をしていたわね。

見た目は勿論、喋り方も、声色も、雰囲気も、仕草も。全て、――別人。


「塾の佐久間くんは、黒髪に眼鏡で喋ってる所も殆ど見た事がなかったから、声も知らなくて、それと……っ」

喉を詰まらせて咳き込む瞳に、優しく笑いかける。そして、出来るだけ柔らかい声を出した。これ以上、怖がらせないように。

「ゆっくりでいいわよ?大丈夫、要がついてるから」

傷付けないように。