「あー!楽しかったっス」
精神的にも肉体的にもボロボロになっている俺の数歩前で、虹が腰を伸ばしながら声を上げる。
「そー言えば、虹は何で遊園地に来たかったんだ?」
爽が虹の頭を撫でながら問うと、少しだけ照れくさそうにしながら、虹は指に髪を絡めた。
「実はボク、今日誕生日だったんスよ。それで、大好きな先輩達と最後に思いっきり遊びたいなーって思ったんス」
そんな可愛らしい事を言う虹に、爽を巻き込んで要が抱きついていく。
「ちょっとアンタ!誕生日なら誕生日って前もって言いなさいよ!」
「ほんとだよなー、水臭いぞ?しかも最後ってなんだよ」
虹はあの日以来、
ほぼ毎日の勢いで俺達と行動を共にして来た。学校は?と尋ねても答えは決まって「ボク、頭良いんで」だけ。
それが最後っていうのは、流石に俺でも引っ掛る。あれだけ一緒に居たのに何でだ?
「や、実はですね。流石に親に怒られちゃったんスよ。義務教育は辛いっスねー!」
そう言って笑う虹に、何故だか感じる違和感。けれど、然程気に留める事でもないだろうと口にはしなくて。
「じゃあ、これから要んちに来る?多分ひぃも居るから、ケーキ焼いて貰いましょ?」
「いいんスか?!」
目をキラキラとさせる虹。やっぱりただの思い過ごしか。一歩、一歩、進んで行く皆に俺も足を進める。
「ちゃんと黒凰に来いよ?」
爽の言葉に、虹は満面の笑みで頷いた。本当に、嬉しそうに。幸せそうに。
そして事件は、一週間後に起こる。