「……アホか」
ふいと逸らされた視線。でも、それでいい。今は、それだけでいい。
「さーて、後輩達も帰るみたいだし、僕達も帰ろっか?」
上着を手に取り、扉に向かおうと足を進める。月明かりに照らされ、伸びる影は一つだけ。でも、背中越しに感じる気配。
それを受け入れ、瞳を閉じる。
そして、
「ありがとな、――メグ」
手から、上着が落ちていった。
「……久しぶりだね、その呼び方」
この問い掛けに、返事はない。けれど、伸びる影は二つになり、重なってゆく。
ああ、どうしたって
笑みが零れてしまう
君達も、――そうだろう。
この日、
一つの大きな戦いが、静かに幕を閉じた。



