眼帯×CHOCOLATE

瞬間、

風が人工的に二人の間から作り出される。

銀ちゃんの右拳は椎名瑞樹の顔の横で逸らされ、椎名瑞樹の右拳は銀ちゃんの左手の中に納まっていた。

――互角


銀ちゃんは強い。けれど、椎名瑞樹も強い。それぞれの守りたいものを守る為に、より一層強くなれるのだろう。


武器などは一切使わない

本当に拳と拳の真剣勝負

止まる事のない両者の攻防に、俺達はただ見守る事しか出来なかった。いや、見守る事で俺達は俺達の守りたいものを守っている。

気が付けば、周りで喧しく吠えていた野郎共も、大人しく二人の戦いを見ていた。魅入っていた。

これが、頂点を決める戦い。





倒れても、倒されても、血を吐いても、血を吐かせても、一歩も引かない二人の姿に、如何し様もなく心が騒ぐ。

何度、銀ちゃんの拳が椎名瑞樹に届いただろう。何度、椎名瑞樹の拳が銀ちゃんに届いただろう。

そんな中、ふと違和感に気が付いた。


「―――」

銀ちゃんはいつものように強い。でも、どこかがおかしい気がする。変な言い方だけど、妙に正気というか…