中央には、遠くからでもよく映える。深紅の瞳を揺らす人物。

椎名瑞樹

黒凰学園トップの証のブレザーは着ていない。本当に、真剣に戦う気なのだろう。

そして、そんな椎名瑞樹の周りを固めているのは、以前見た幹部の奴ら。それと、

ひとつ後れて歩いて来るのは、野々上先輩だった。先輩の手には黒いブレザーが持たれている。

近付いてくる先輩方に、銀ちゃんを筆頭に俺達も足を進めた。

異様な空気を感じ取ったのか、周りで喧嘩をしていた連中の動きがピタリと止まる。

学園内にいる奴らも、窓から身を乗り出して何かを叫んだり物を投げたりして茶々を入れてきたけど。双方気にも留めない。




「久しぶりやな、東雲」
「――ええ」

荒れ放題のグラウンドの中心で、足を止める二人。俺達とあちらサンの幹部は、五歩程後ろの位置で待機している。

「ゆーてもこれが初めての“真剣勝負”やんな?覚悟は出来てるんやろ。なんせ負けたらお前ら全員、学校辞めるらしいやん」


学校を辞める。

学校を、辞める?

ガッコウヲヤメルウ?


椎名瑞樹の言葉に、銀ちゃんが一瞬俺の方を向いて。ウン。ものっそ睨んできよった。あれ、俺これ後で殺されるくね?