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あの事があってから、

ろくに学校に行ってなかった俺達。

久しぶりの黒凰学園の荒れようは酷いものだった。そこら中で喧嘩をしている野郎共。教師は殆ど居ない。放棄してんだな…


「あと五分で五時ね」

腕にはめられたゴツイ時計を見ながら、要が時刻を告げる。銀ちゃんは俺達の一歩前に出て、空を見上げていた。

表情が見えないから少しだけ不安になる。

「しっかし酷いなオイ」

しみじみと吐き棄てる爽に、俺と要は頷くしかなかった。ほんと、酷いなんてもんじゃない。たった数日、数週間で、ここまで世界は反転するのか。


「元に、戻してみせるさ」

くるりと方向を変え、銀ちゃんは俺達を一人ずつ見ていく。その瞳を見て、安心した。多分、二人も同じ事を思っただろう。


「まあ、黙って見てろな?」

僅かに口の端を持ち上げ、銀ちゃんは再び方向を変えた。ああ、良いタイミングだ。

「おでましだな」
「そうみたいねエ」

まだ、ガラスが割られたままの状態の正面玄関。そこから現れる複数の影に、空気が変わっていく。変えられていく。

「銀」
「銀ちゃん」
「銀さま」

「……任せとけって」