「まどろっこしいわねぇ。そんなんだからアンタは油揚げなのよ!要が見てあげる!」
「…どわっ!」

例の如くで心の突っ込みを聞いていた要が、俺からスマホを奪って軽やかに操作をし始めた。

そして、



“明日の午後五時、校庭で”


短くて簡素なメール文を、ずいと目の前に差し出される。メグメグとかふざけた登録名とは反対に、ドライ過ぎる内容。

「つうか先輩、行動早くね?」

正直、あの椎名瑞樹が簡単に首を縦に振るとは思っていなかったので、この早すぎる答えに驚きを隠せないでいた。


――俺と先輩との約束

それは、銀ちゃんと椎名瑞樹のタイマン勝負。他の連中には一切手出しをさせず、本当の本当に正々堂々頂点を決める戦い。

その勝負を呑んでくれるように、先輩から椎名瑞樹を説得して欲しいというのが俺の要求だった。




「校庭か」

ぽつりと爽が、呟く。

「…皆の前でって事だよな?」

ああ、そうか。そうなんだ。

本当に先輩はちゃんと話をしてくれたんだ。真剣に、俺の話を聞いてくれていたんだ。