眼帯×CHOCOLATE

ビリっと、空気が変わる。

あー、もう。これだよ。これがマジで恐いんだよ、この二重人格クソ親父…

普段は陽気な気の良い父親。でも、不意にスイッチが入ってしまう。こうなったら最後、誰にも止められない。

幼い頃は、そのあまりの豹変振りと無敵の強さから、親父の存在が恐くて恐くて仕方がなかった。下手すりゃ殺されるんじゃ無いかとさえ思っていた程だ。


「なーんて、今日は勘弁しといてやるよ」

ニヤリと動く口角が、逆に恐ろしい。

これ、確実に帰ったらヤられるよね?口は笑っていても、目が笑って無いもの!ぶっとい死亡フラグ建設しちまったなコレェエ!

「お前の相手は恵君だもんな?」

いや、オッサンよく見て。その先輩がものごっつい勢いで笑い堪えてる感じなんですけど。ものごっつい恥ずかしいんですけど。

「だーー!もうし切り直し!ハイ!ここからまたシリアスモードに!入っから!」
「……え、入れるの?」

口元を押さえながら先輩は言う。

「無理だな、充だし」

大口開けて笑いながら親父が言う。

これ、俺の扱いマジで酷くね?子供悩み相談センターに電話すんぞ!理不尽!!!

「まあまあ、ちゃんと審判してやっからガンバレや。成長したとこ見せろよ?」

まだ若干笑いが止まってない様子の親父が、軽く俺の肩を叩いていく。

「恵君も腕、鈍ってないんだろう?ちゃーんと公平な目で見るから安心してな」
「はい」

親父の目が、先輩の目が、真剣になる。




「さ、始めようか?」