「何で僕がこんな話をしたか解る?」
二度、首を横に振る。
「これは推測なんだけどね、東雲君も瑞樹と同じ思いなんじゃないかなって思ったんだ。そしてキミ、甲斐君。甲斐君は僕と同じなんじゃないかなって」
「…っ!」
先輩は徐に立ち上がり、右手を差し出して人差し指だけを動かした。
「さあ、始めようか。再戦を申し込みに来たんでしょ?」
妖しい微笑みに一瞬怯む。けれど、ここで尻込みをしているわけにはいかない。
「先輩はエスパーですか」
「ははっ、流石にバックには入れないけどね」
「って、そっち?!」
文武両道に、笑いまで出来るときた。この人、もしかして作中のナンバーワンの最強キャラなんじゃないだろうか。
そんな俺の脳内突っ込みは、スルーしてくれたのか否か。先輩はもう一度だけ微笑んで足を進める。
「うちの道場でいいかな?」
「道場まであるんスか?!」
「うん、普通にあるよ?」
「…ヒエッ」
驚嘆の声を上げると、だってお金持ちだから。というなんとも嫌味が嫌味に聞えない爽やかな声が返って来た。
まあ、でもかえって好都合だ。正直、どこで挑もうかと困っていたから。
そして俺は先輩の許しを得て、待ち草臥れているであろう人物に電話をかける。
「――あ、親父?」