お姫様と1.5人の男

桜太君の視線がかなりと言って良い程、痛いのは気にしないでおこう。

怪しまれないよね?大丈夫だよね?恐る恐る渡部さんを見る。

すると渡部さんは優しく笑った。怪しんでいる様子はこれっぽっちも感じられない。


「あらあら、珍しいですねぇ。寝ぼけて歩きながら怒鳴る癖、もう治ったとばかり」


……え?そうなの?結構無理のある言い訳だと思ったんだけどな。


「小学校の時までたまにあったんですよ? 今ではめっきりなくなったので、治ったのかと」


桜太君の痛い視線はそんな意味も含まれていたって事?

別の視線を感じてそっちを見れば、玄一さんが目を輝かせている。何で?


「もう少ししたら朝食の準備も整いますので、お支度なさって下さいね?」


それだけを残して渡部さんはその場からいなくなってしまった。