お姫様と1.5人の男

『お前、恩を忘れた訳じゃなかろうな……?』

「いいえ? 恩は絶対忘れませんから」


玄一さんと大峰さんのやり取りで、あたしは大峰さんが此処へ来た経緯を知る。

3年前。まだ玄一さんが生きていた頃の事。屋敷に執事みたいな人間が欲しい、と言いだしたのが始まり。

やはり有名な薩川家に仕える事の出来るチャンス。

応募は殺到。その中で、玄一さんは自分の目で品定め。そして当時23歳の大峰さんを選んだ。

まるであたしに説明してくれるかのように大峰さんが話す。

…………あたしに説明するように?って事は?


「雪佳さん? いるのは分かっていますよ? 桜太さんはもう良いのですか?」


やっぱりバレていましたね、そうですね。

玄一さんは気付いていなかったみたいで驚かれていた。

あたしの顔を見た途端、あたしに飛びつこうとする。無理なのに。