サイレント・マリン


「ね、人魚はどうして地上が恋しいんだと思う?」


「王子様に会いたいからじゃないの?」


僕の言葉に、彼女はちいさく首を振った。


「違うよ。歌声が響くからなの。──海の中だと、人魚がいくら綺麗な声で歌っても、泡になって消えてしまうから」


彼女は微笑む。


「──聴いて」