「桃ー!!生きてるか?」
「…生きてない」
「話してるだろーが!!
桃、ちゃんと生きてるな」
お兄ちゃんは一人で納得すると、車から降りた。
どうやら、目的地に到着したみたいだった。
気持ち悪さを我慢しながら、あたしは車から出た。
そして、目の前にある建物を見上げた。
「…ここ、覚えてるだろ?」
お兄ちゃんはあたしに優しく問いかけてきた。
あたしは…気持ち悪さなんかも忘れて、ただただ黙っていた。
「こ…ここって………」
信じられない。
偶然にも程があるよ。
だって、あたしがお兄ちゃんに連れてこられた場所は…
―――あたしと遼平さんが出会った場所であり、別れを告げられた場所でもあった、あのホテルだったんだから…。
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