「…浜野がいるんだろ。 だから部屋に戻れないって訳か」 「…よく分かってるな、幸也」 事態を理解した幸也に俺は苦笑い。 …幸也だけは知っている。 俺が愛しいあの人と別れた本当の理由を。 「…これからどうすっかな」 俺はジーンズのポケットの中を漁る。 美香と過ごし始めてからは、ケータイや財布、車の鍵などをポケットに入れる癖がついた。 すぐに逃げれるように。 「会社にでも戻ろう―――」 「うち来れば?」 …は? 俺は幸也の言葉に思わず固まってしまった。 .