立ち上がりキッチンに行こうとした時、



「香澄はさぁ…俺のこと名前で呼んでくれないの?」



と、先生が言ってきた。


先生に名字じゃなく名前で呼ばれてドキドキする。


名前で呼ばれるのは初めてじゃないのに…。



「…それは…」



私は先生に背を向けたまま言った。



「だって彼氏の事を名前で呼ばないのはおかしいだろ?」



確かにそうだ。
彼氏の事を名前で呼ばないのはおかしい。


だけど…先生は本当の彼氏じゃない。
今日1日終われば彼氏じゃなくなる。



「友達の前で俺のこと何て呼ぶつもり?」


「………」



正直そこまで考えてなかった。


たぶん"ねぇ"とか"あの"とか言うと思う。



「俺のこと名前で呼んでみて…」



私はゆっくり先生の方を向いた。