タバコの香りと甘い香りが鼻をかすめる。
胸がはち切れそうなくらい痛い。
胸の鼓動が早くなっていく。
私は手で先生の体を押した。
けど…更に先生の私を抱きしめる腕に力が入るのがわかる。
男性の力には敵わない。
私は体の力を抜いた。
「顔上げて?」
先生にそう言われて顔を上げる。
「俺に任せとけば大丈夫だから…なっ。香澄…」
先生はそう言うと、顔を近付けて私の唇を塞いだ。
先生とのキス。
それは私にとってファーストキス。
恋人同士がする甘いキスじゃなく、偽りの恋人同士がする苦いキス。
私の頬を一筋の涙が伝った。



