"カリカリ"とペンを走らせる音だけが教室に響く。



「なぁ…佐渡…」



ふいに先生に話し掛けられて体が"ビクッ"と反応する。



「…は、はい」



日誌に目を落としたまま返事をする私。



「さっき溜め息ついてたけど、何か悩みでもあるのか?」



えっ…。


私は日誌を書いてた手を止め先生の顔を見た。


目が合って、思わず視線を逸らしてしまった。



「俺で良かったら話聞くけど?」



先生から意外な言葉が飛び出した。
いつもクールな先生。
生徒のことなんか何も考えてないように思ってたから…。


私はもう1度、先生の顔をチラッと見た。


滅多に笑わない先生の顔は笑顔だった。