「もうこんな時間かぁ…」



先生が腕時計を見て呟いた。


先生の言葉で壁にかかっていた時計を見る。



「ホントだ」



時計の針は20時ちょうどを指していた。


二宮くんと会ってから…先生の部屋に来て随分時間が経っていた。



「送って行くよ」



先生が立ち上がりながら言った。


私はマグカップを持ってキッチンに行った。


先生はタバコをジーンズのポケットに入れていた。


キッチンからリビングにいる先生の後ろ姿を見る。

"帰りたくない"


私の頭の中にそう浮かんだ。


先生と離れたくない…。


涙が溢れてくる。


私は手で涙を拭い、ゆっくり先生のとこまで歩いて行く。


そして先生の背中に抱きついた。



「佐渡…?」



驚いたような声を出す先生。



「先生…帰りたく…ない…よ…」



私は先生の背中に向かって呟いた。


先生はクルッと私の方を向いて、私の体をギュッと抱きしめる。



「佐渡…」


「ん?」



私は顔を上げて先生を見る。
先生は私の顔を見下ろしていた。



「俺…理性抑える自信ないよ…それでもいい?」


「……ん」



私は小さく返事をした。