王子は頷いた。


しばらく話して電話を切り姫に向き合った。


「今、僕と千景は付き合ってるんだ。前に偶然再会してね」


隠していた記憶。


忘れられない彼との思い出。


それが一気に姫に襲い掛かる。


「や…嫌…」


頭を抱え込んでしゃがみ込んだ。


そんな姫を優しく抱きしめた。


「大丈夫。姫には僕がいるから」


その声が心を少し和らげた。


唯一の血縁者。


大好きな兄。