空も涙を流しているのに、僕は涙を流せない。 葬式に来ている者は泣いているのに。 娘が亡くなったのに、親の姿は見えなかった。 「坊ちゃん」 後ろから結崎に話しかけられた。 振り返ると結崎は僕の事を驚いたような目で見る。 無表情すぎるほど無表情。 感情を失ってしまったかのように。 「何」 「旦那様と奥様が来ました」 この世で一番嫌いな二人。 僕は両親が大嫌いだ。 今迄僕等の事を何とも思ってなかったのに、死んだら来るのかよ。 手を握り締めた。