狂気。

凶気。

狂喜。

佐久間武羅人は常軌を逸した表情で私に襲い掛かる。

…亜吸血種にだって痛みはある。

ただ人間に比べて尋常じゃなく強靭で、生命力が高いだけだ。

傷つけば苦痛を伴うし、肉体を激しく損傷させられれば死にもする。

だというのに武羅人は、その苦痛さえも快楽の対象としている節すらあった。

いや、正確には『自分を傷つける事の出来る相手』に対して愉悦を感じている。

信じられない。

…亜吸血種の強さはその血で決まる。

血統の高さはそのまま戦闘力の高さだ。

だというのに、何故雑種如きのこの男が、ここまでの戦闘力を発揮できるのか。

名門杖縁家のこの私を翻弄するほどの力を持っているのか。