『エゴ』というのはそいつの持つ本性。

素顔、深層心理、偽らざる本音。

『エゴ』を見ればそいつがどんな奴なのかがわかる。

どんなに着飾っていても、どんなに取り繕っていても、『エゴ』はそいつを丸裸にする。

そういった意味では、この野須平という亜吸血種の『エゴ』は最高だった。

侮辱でも嘲りでもない。

れっきとした賛辞だ。

こいつは正直だ。

包み隠さず自分の『エゴ』を曝け出し、梓に欲望をぶつけた。

同じ『エゴ』を行動理念とする俺にとって、好感すら覚える。

『エゴ』をひた隠し、聖人君子のようなツラをして欲望をベールの向こうに仕舞い込む輩よりは、ずっとこいつの方がマシに思えた。

それだけに…こいつの『エゴ』が満たされなかった絶望の表情は愉快極まりなかった。