リビングのドアに手をかけると、あたしにちらりと流し目をくれた。


「ちょっと出てくる」

「え?」


……珍しい。


「時間までに帰んなかったら、勝手に帰れよ」

「……」


それは言われなくても帰りますけども。

だってねぇ、何であたしが塔也の帰りを三つ指ついて待ってなきゃいけないのよ。


心の中で悪態ついてる間に、ガチャっと重いドアの閉まる音がした。

ずいぶんあっさり出て行くね。


しぃーん。

静まりかえる家の中。



(どこ行ったんだろ)


機械的に手を動かしながら。


(……5時まで、帰ってこないのかな)