「悪りぃな。気にすんな」


あたしの肩を、ポンと叩く。


「んじゃ、また来週な」


それだけ言うと、ドアの中に消えた。



重いドアが閉まるまでの間に、リビングに向かって叫ぶ声が聞こえた。


「おまえらなぁ、女の子に何てこと言うんだよ……」




目の前でがちゃりと閉まったドアを見つめて。

思わずにっこりと微笑んでるあたしがいた。



本当に、ほんのちょっとしたことだったけど。

あの人、あたしに一応気を遣ってくれたんだ。


そんなの、初めてだったし。

やっと人間扱いしてくれたような気がする。



……って、もともとのハードル低すぎるんだけどさ。



あたしは初めて気持ちよく家路についた。