8月31日、この地区ではお祭りがある。

そこら辺のお祭りとは格別に違って、わざわざ県外から来る人もいる。

あたしは人混みもキライだからほとんど行かないけど。

今年は違うって、思ってた。

恭一の性格ならきっと、あたしを誘ってくるだろうって。

そう、思ってたけど…当日になっても、何の連絡もない。

何?アンタの気持ちってそんなに軽かったの?

性格悪いって、ワガママだってわかってるけど

………誘ってほしかった。


「もーほら亜香梨、機嫌直してよー」

「は?別に機嫌悪くないし」


いや、うそ。

自分でわかってるけど、素直になれない。

そんなあたしをちゃんと理解してるらしい柚姫。


「亜香梨、そんなにむくれないの。
 ほら出来たわよ」


ぽん、と挿したばっかりの帯を叩く。

色素の薄い茶色の髪に同じ色の瞳。

…あたしのお母さん。