柚姫なら聞いてくれる…。


「…アイツがあたしに付き纏うようになって、ほんとうざかった」

「…うん」

「どんな態度とっても笑顔だし、イラついた」

「うん」


すぅっと、息を吸い込んだ。

あたし、変なの…。

何でこんななんだろ。

絶対…岡沢のせいだ。


「でも…、いなかったら何か、物足りなくて」

「…」

「けどあたしは臆病だから、傷つきたくなくて…。
 あのときみたいに裏切られるのが怖くて、拒絶した」


もうあの頃に戻りたくなかった。

お父さんでさえも拒絶して、誰かに触られるのが怖かった。

“自分”を失いそうで…怖かった。


「あたし、ばかだ…!
 岡沢はアイツと違うのに、勝手に重ねて勝手に拒絶した…。
 もう、どうしようもないよ…!!」


涙が流れるのが嫌で、拳を握った。

簡単に泣くような女には…なりたくない。


「どうしようもなくなんかないよ」

「…は?」


柚姫を見ると珍しく真剣な顔だった。