「月の傷は、深いんですか……?」 やっとの思いで絞り出した私の言葉に、羽生さんは小さく頷いた。 「お嬢さんの傷に障りそうだからあまりいいたくはないんだが…… 正直なところ、今夜が峠らしいことを先生が言っていた」 「そうですか……」 私がアッサリと返事したのを、訝しそうに羽生さんが見ている。