孤高の狼に捧ぐ恋唄



心配そうに私に話し掛けてくる父に答えず、私は言った。



「お父さん、月は…?

……あ、えと……」



父が月を知るはずがない。



私が何と説明しようか迷っているうちに、医師がやってきた。



医師は看護師一人を伴い、二言三言父と会話をすると、私に話し掛けてきた。



いくつかの体調への質問に答え、ケガの程度や退院予定について確認した。



首元の傷は幸い大きな血管は避けており、血の勢いの割には出血も多くなかったらしい。



しばらく様子を見てからだが、二週間ほどで退院出来るだろうとの所見だった。