年に一度、僕は必ず十年前の夢を見る。そして、そんな日には決まって「彼女」から絵はがきが届く。

この日がまさにそうだった。

虫の知らせというヤツだろうか。そう言えば最近、大きなクジラが海を泳ぐ姿を何度も夢で見た。

その夢はいつもアクリル・ブルーの深い海の奥で幕が開き、決まって一筋の光が海中に差し込むシーンから始まった。

そこは、唯一光が氷山を通して深海に届く奇跡の場所だった。

海中に突き立った氷山は巨大なプリズムのようでもあり、はるか昔に海に没した古代神殿の柱のようでもあった。

その奥から姿を現したクジラは、氷山の谷を悠々とすり抜け、次々と群れをなして深海流に身を任せていく。