紺色の海、緋色の空

『大丈夫。心配しないで』

あの時、早紀はそう言った。

素早く椅子の指紋を拭い、髪の毛を拾い集めて僕の袖を引いた。

僕はただ震えていた。

何が起こったのか、何をしでかしたのか、現実を受け止められずに震えていた。

足下に男の顔が見えた。

透けるような紅い血が、後頭部のあたりから床に広がっていた。

僕たちは保健室を後にした。

もつれるような足で走った。

いつもの鳥居をくぐり、神社の境内で早紀を押し倒して抱いた。

「僕が好きか?」と何度も尋ねながら、狂ったように腰を突き立てた。

早紀は何度も頷いた。

必死に僕の背中にしがみつき、泣きじゃくりながら体を痙攣させた。


――そしてその翌日、

早紀は、書き置きを残して首を吊った。