ヒース、ジェーン・グレイ、スコットランド、ジェシカ・アシュレイ

早紀、さき、サキ……



『大丈夫よ、心配ないわ』



ふとどこかで早紀の声がした。

僕は咄嗟に手を伸ばした。

「早紀?!」

僕の声が虚空に響いた。

耳鳴りが引いていく。

いつしか周りはしんと静まりかえり、人混みも消え去り、僕は一人で真っ白な塔の中心にたたずんでいた。

「……早紀」

鬱病のようにもう一度早紀を呼んだ。

だけどもう、どこからも彼女の声は返ってこなかった。