なぜ?なぜ?……と、僕の頭の中をいろんな疑問が渦巻いていた。

ただ一つ明らかなことは、この思考の迷宮から逃れるには、旅を続ける以外にないということだった。

窓の外を見ると、列車はゆるりと弧を描きながら、草原の中を走っていた。

草原、羊、草原、草原、そして街。街を出ると再び草原……

ヨークまでの風景は、ずっとそんな感じで続いていた。

「まるで緑色の天の川を走る銀河鉄道にでも乗り込んだ気分ね」

列車の窓にもたれ掛かりながら、シロナがあくびをかみ殺した。

「宮沢賢治は知ってるんだ」

「ええ」

「夏目漱石は知らないのに?」

「そうみたいね」

シロナはペロリと舌を出した。

「草原はもう飽きた?」

「ちょっとね」

それから「羊は?」と尋ねると、「とっくに」と言って彼女は笑った。