キングスクロス駅は、僕が今まで見た中でもっとも美しく、優雅なたたずまいをした駅だった。

構内はすべて木造。

駅全体が緩やかなアーチ状の屋根に包まれている様は、さながら巨大なクジラの体内を想像させた。

駅に着いた僕たちは、ヨーク行きの切符とヨークからエディンバラまでの切符を二枚ずつ買った。

目的地はエディンバラ。ヨークはそのちょうど中間に位置する街で、僕たちはそこで今夜の宿を探すことにしていた。

ずらりと並んだ改札の向こうには、様々な色や形をした列車が停車し、発車の刻を待っていた。

オイルだろうか、日本とは違う列車独得の匂いが構内に漂っていた。

駅員に切符を見せると、すぐにホームを指さしてくれた。

「行こうか」

と僕が切符を差し出すと、シロナはそれを楽しそうに受け取った。


僕たちの旅は、こうして再び動き出した。