老婦人の言葉に、僕は一瞬目の前が真っ暗になったような脱力感を覚えた。

「なくしたんですか?」

「ええ」

「名前を覚えてません?」

シロナの問いに、老婦人は申し訳なさそうに首を横に振った。

「ですがご婦人、今でもこうして花は届いておるわけじゃろう?」

僕たちの後ろから教授が言った。

「……それだ」

僕はもう一度顔を上げた。

「送り状!!」

シロナと声を揃えてフロントに身を乗り出すと、老婦人は「ああ」と言ってゴソゴソと引き出しを探り始めた。

「それならあるわ。なにせ今朝届いたばかりですもの」

「見せてもらってもいいですか?」

「もちろんよ」

僕たちが固唾を呑んで見守る中、老婦人は一枚の紙切れを差し出した。