月と太陽の事件簿4/卒業までに解く問題

「頭うたなくて良かったね」

保健室にて。保健の先生が不在だったので、保健委員の幸子が手当てをしてくれた。

手当てと言っても左手をひねっただけなので、湿布と包帯だけで済んだ。

階段から落ちたとはいえ高さがなかったのが幸いした。

「しかし腹たつよね、うちの男子のバカ共には」

幸子が怒りきれないといった口調で言う。

「ふざけあったはずみで人の背中押すなっていうの」

果たしてそうだろうか。

あたしの脳裏には『死ねお前は』という文面が浮かんでいた。

さっきの出来事が誰かに仕組まれたものだとしたら。

どさくさにまぎれて誰かがあたしの背中を押したとしたら…。

「どうしたの果穂里」

幸子があたしの顔をのぞきこんでいた。

「ううん、別になんでもない」

「大丈夫?顔色悪いよ」

「平気だって」

幸子にだけは心配かけたくない。

「平気平気。ほらもうこんなに元気♪」

あたしは努めて明るく振る舞った。