だからと言って信じられないとまで言われる覚えはない。

「だいたいが前から言ってるじゃない、あたしのタイプ」

「タイのキックボクサーだっけ?確かブアなんとか…」

「ブアカーオ・ポー・プラムック。いい加減覚えてよ」

「覚えられるわけないでしょ!」

…すごく怒られた。

K-1でバリバリ活躍してる人なのにぃ。

みんな魔裟斗は知ってるのになんでブアカーオは知らないのさ。

「あーいうたくましい人って周りにいないのよねー」

「いるワケないでしょう!」

…また怒られた。



その日の放課後。

帰ろうとして下駄箱の前に立ったところで携帯が鳴った。

麗美姉ちゃんだった。

『もしもし果穂里?』

「どうしたの、お姉ちゃん」

『昨日達郎に会ったんでしょう?』

「うん」

『なんかあんたに迷惑かけてんじゃないかと心配になって』

そんな事が心配になるって、ふだん達郎兄ちゃんは麗美姉ちゃんになにをやらかしてるんだろ…。