「ともかく、怪我人も出さずに紅竜を説得できたことだしな。とりあえずお前の処分はその足の怪我が治るまで保留だ。……もっとも、上層部がお前を、あれだけベッタリ乗り手に懐いてる紅竜から引き離すとは考え憎いがな」

ほら、またしっかり心配してる。

しかし最後に『あの紅竜の戦闘力を下げるのも惜しいしな』と落とすのも忘れない。


「ああ、お前にちょっかい出してた奴らだがな、紅竜の一件で完全にビビっちまってな、全員転属願い出しやがった。まあ斬って捨ててオマケに『気合いが足らん!』と平手をかましてやったがな!はははっ!」

そう言って豪快に笑う姿は、おおよそ長官には見えない。

「じゃあそのうちまた顔出してやるから、早く足治して紅竜に顔見せてやれよ」

「うん……ありがと、秋ちゃん」

まだじんじんする頬を押さえながら微笑むと、長官はぽりぽりと顎を掻いて踵を返した。

「仕事中の俺は長官だ。秋ちゃんはプライベートだけにしとけ!」

バタンと後ろ手に閉めた医務室のドアが、強すぎる衝撃でまた半分開くのを、私はニヤけながら見守っていた。