よく生きて帰ってこれたものだと思う。

正直、自分が掏摸を働いたのが、あの悪名高いアッパー・ランナーズのクルーだと知った時は、このまま真っ逆さまに落とされて、今度こそ死ぬものと思った。

本日三度目の死の危機だった。

じゃあ、何故ぼくは今こうして生きているのか。


「ただいま……」

「お帰り兄ちゃん。どしたー?そんな、食あたりで1日中トイレが友達みたいな顔して」

そこまで悲惨な顔してるのか、ぼくは。

「いや、なんでもないよ。それよりジジイはまた工房か?」

「うん、兄ちゃんが帰ってきたらすぐに呼べってさ。それより……何?その花柄のパンツ?」

そう、気分は落ち込んでいようと、下半身は彩色鮮やか花柄ルーク。しかも、こんな日が落ちた後でもなければ外を歩くのもははばかられるようなファンキーな柄だった。

「……ちょっと訳ありで、な」

「ちょ! ちょっと待って兄ちゃん!」

はぐらかして工房に逃げ込もうとするも、流石に言い訳の効かない存在がもう一つ。

我が家の帳簿番は、ぼくの後ろを指差して訝しむ様な視線を向けると、こう言った。

「あなた……どちら様?」

「ルークの恋人、百花繚 乱。好きな言葉は“適材適所”」

胸元を大胆にはだけさせた、チューブトップとつなぎ服女は、しれっとそんな事を言ってカナを驚かせた。……なによりぼくが一番驚いたのだが。

そのまま彼女は、信じられないくらいのスマイルで妹に笑いかけた。

「よろしくね、カナちゃん」