子供の頃、俺は俗に言う不登校児だった。


別にいじめられていた訳でもないし、今となれば、特に理由も思い浮かばない。


ただ、小学校4年生にもなれば、自分が周りにどう思われているかという事が、それとなくわかってくる年頃で。


体の大きかった俺、あまり笑わなかった俺、よく遅刻や早退をしていた俺。


「優心君のとこ、お母さんいーひんねんて」


そんな俺を、周りは敬遠するようにヤンキーだと言い出した。


正直、面倒くさかったし、否定する気さえ起こらなかった。


でもそんな中、俺に好意を寄せる女の子がいた。


クラスでも友達の輪の中心にいる、坂本さんという女の子。


ある日の休み時間、坂本さんの取り巻きに呼び出された俺は、3階の人気のない音楽室の前で、告白された。


「好きやし付き合って!」


「無理」


かわいくて明るい子だった。


好きだと言われれば、自分も好きだと錯覚しそうだった。


でも、幼稚だった俺が照れ隠しに言った一言は、それだけだった。


「優心君が坂本さんの事振ってんて」


お喋り好きの女子達によって広められたその噂は、ますます俺の居心地を悪くした。


勉強は全くおもしろくない。


毎日毎日、同じ事の繰り返し。


俺は、何の為にここにいるんだろう?