大橋勇貴(オオハシ・ユウキ)。高2。いかにも人畜無害っぽく見えるのは童顔のせいである。


決してもてないほうじゃない。むしろプレイボーイと言われるくらい何度も新しく彼女を作ってきた。


しかし、彼の方から交際を申し込んだことは一度もない。


現在、彼は今の彼女と手を切ろうと考えていた。気まぐれな彼のこと、それについて特別な理由があるとはまず考えられない。


しかし、理由はあった。好きな娘ができたのだ。告白したいがどうにも照れくさいし、ためらいがある。


誰も信じてくれないが実は彼はとてもシャイなのだ。


「誰がシャイですって…?」


昼休みの屋上で別れ話を切り出した勇貴に対して、友希子(ユキコ)はスネた様子で別れることを拒んだ。


「ふざけんじゃないわよ!私、絶対に別れないから」


それでもやはりちゃんと別れておいたほうがお互いのためだ。お互いというか、勇貴の身勝手かもしれないが…。


「ごめん…。友希ちゃんには悪いと思ってる。けど…」


口ごもる勇貴。友希子がキッと目を上げる。


「だいたいね、好きな女ができたなんて…どういうつもりなの?私は勇貴しか見てなかったのに…私の気持ちはどうなるの?ねぇ?」